「最近、お茶や汁物でむせることが増えた」
「食事中に何度も咳き込むようになった」
そんな変化に気づいて、心配になったことはありませんか?
私は特別養護老人ホームで管理栄養士として働いていますが、「むせ」はご家族からもご本人からも、とても相談の多いお悩みのひとつです。むせは体が食べ物や飲み物の誤った侵入(誤嚥)を防ごうとする大切な反応ですが、頻繁に起こる場合は注意が必要です。
現場でよくあるのが、周りが心配してもご本人は「大丈夫、ただの咳」「年のせいだから気にしないで」と、むせを軽く受け止めようとされるケースです。これは、食べる力の衰えを認めたくないという気持ちの表れであることも多く、決して珍しいことではありません。無理に指摘して不安にさせるよりも、さりげなく食事の工夫を取り入れることから始めるのも一つの方法です。この記事では、むせが起こる原因と、今日から試せる予防の工夫をお伝えします。
なぜ、むせるようになるのか?
むせは、食べ物や飲み物が本来通るべき食道ではなく、誤って気管に入りそうになったときに、それを外に出そうとする体の防御反応です。
加齢とともに、飲み込む力(嚥下機能)や、気管に蓋をする喉の動きが少しずつ低下していきます。特に、さらさらとした液体(お茶や汁物)はスピードが速く気管に入りやすいため、水分でむせやすくなるのはよくあることです。
また、食事中の姿勢や、一口の量、食べるペースも、むせやすさに大きく関わっています。
むせを防ぐ3つの工夫
原因が分かったところで、今日から試せる具体的な工夫を見ていきましょう。
姿勢を整える
椅子に座る場合は、かかとがしっかり床につく高さの椅子とテーブルを用意し、やや前かがみであごを引き気味の姿勢を意識しましょう。あごが上がった状態は、気管に食べ物が入りやすくなるため注意が必要です。
ベッド上で食事をとる場合は、上体を30〜60度ほど起こし、頭の後ろに枕を入れて、首がやや前に曲がるようにすると、飲み込みやすくなります。
一口の量とペースを見直す
一口の量が多いと、誤嚥のリスクが高まります。ティースプーン1杯程度を目安に、ゆっくりと食べられるペースを心がけましょう。急かさず、飲み込んだのを確認してから次の一口を運ぶことも大切です。
食事中は、テレビを消すなど気が散らない環境を整えることも、むせの予防につながります。
とろみをつける・食べ物の形を工夫する
お茶や汁物など、さらさらした水分は市販のとろみ剤を使ってとろみをつけると、気管に入りにくくなります。麺類も、汁にとろみをつけたり、麺を柔らかく茹でて食べやすい長さに切ったりする工夫が効果的です。
酸味の強いものはむせを誘発しやすいため、酸味を控えめにする、湯気の出る熱いものは少し冷ましてから食べるといった配慮も役立ちます。
注意したい「刻み食」の落とし穴
噛む力が弱くなった方には「刻み食」が良いと思われがちですが、実は注意が必要な食形態です。
刻んだ食材は口の中でバラバラになりやすく、うまくひとまとまりにできないまま飲み込んでしまうことがあります。まとまらない食べ物は喉に残りやすく、かえって誤嚥のリスクを高めてしまうのです。
刻み食を使う場合は、とろみをつけてまとまりやすくするなど、ひと工夫を加えることをおすすめします。
まとめ:小さな変化のサインを見逃さないで
むせは、加齢による自然な変化であると同時に、体からの大切なサインでもあります。姿勢、一口の量とペース、食べ物の形態という3つの工夫を意識するだけで、むせは軽減できることが多くあります。
もし、むせが続く、体重が減ってきた、といった変化が見られる場合は、かかりつけ医や管理栄養士、言語聴覚士など専門職に相談することも検討してみてください。毎日の食事の時間が、少しでも安心できるものになりますように。

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