たんぱく質、実は摂れてない?高齢者に必要な量と摂り方

「うちの親、肉より野菜派なんです」
そう聞くと、なんとなく体に良さそうな気がしませんか。私も昔はそう思っていました。でも実際に高齢者の栄養相談を続けていると、この「野菜中心・あっさりごはん」が、知らないうちに低栄養につながっているケースをたくさん見てきました。
特別養護老人ホームで管理栄養士とケアマネジャーをしている私が、現場でいちばんお伝えしたいこと。それが「歳をとったら、むしろたんぱく質はしっかり摂ってほしい」ということです。今日はその理由と、無理なく続けられる摂り方をお話しします。


「粗食は体にいい」は、実は思い込みかもしれません

たんぱく質は筋肉や内臓、皮膚をつくる材料です。体は年齢に関係なく、常にこれを作り替え続けています。
ところが厄介なのは、加齢とともに「同じ量を食べても、若い頃ほど筋肉に変わってくれない」という体質の変化が起きること。だから若い人と同じ感覚で「少なめでいいや」と食べていると、実は必要量にまったく届いていない、ということが普通に起こります。
実際、国の食事摂取基準でも、65歳以上はたんぱく質の摂取割合を若い世代より高めに設定するよう勧められています。イメージと現実、けっこう逆なんです。
摂れていない状態が続くと、筋肉が落ちる「サルコペニア」や、心身が弱っていく「フレイル」につながります。ここは転倒や寝たきりにも直結してくるところなので、正直あまり軽く見てほしくないポイントです。


こんな様子、見覚えありませんか


• ごはんと味噌汁だけで、あっさり食事を終えてしまう
• 肉より魚、魚より野菜という組み合わせが多い
• 前より疲れやすい、階段がしんどそうにしている
• 体重は変わっていないのに、なんとなく痩せた印象がある
最後の「体重は変わらないのに」というのが、実はいちばん見落とされがちです。脂肪と入れ替わりに筋肉が減っていると、体重の数字には表れにくいんです。心当たりがあれば、少し食事の中身を見直すタイミングかもしれません。


気負わずできる、3つの取り入れ方


「たんぱく質を摂りましょう」と言われると、大きなステーキを想像してしまう方もいますが、そんな話ではありません。
まず、毎食どこかに「何かひとつ」足す。
肉や魚じゃなくても、卵、豆腐、納豆、ヨーグルトで十分です。噛む・飲み込むのが心配な方なら、なおさら卵や豆腐から始めるのがおすすめ。ごはんと味噌汁だけの食卓に、卵焼きや冷奴をひと皿追加するだけで、ずいぶん変わります。
主食そのものにたんぱく質を仕込む。
品数を増やすのがしんどいときは、牛乳ベースのスープにしたり、うどんに卵をとじたり。一品で完結させてしまえば、食べる側の負担は増えません。これは現場でもよく提案する方法です。
買い置きできる「そのまま食べられる」食品を常備しておく。
チーズ、ヨーグルト、魚肉ソーセージ、パック豆腐。食欲がない日、体調がいまいちな日ほど、こういうものが助けになります。噛む力が不安な方には、ゼリーやドリンクタイプの栄養補助食品も選択肢です。こちらの記事で詳しく紹介しています。
(→前回記事へのリンクをここに挿入)

20gの壁」を意識してみる

現場でよく使う目安として、1食あたりのたんぱく質はだいたい20g前後を目指すと言われています。数字だけ見るとピンとこないかもしれませんが、卵1個、納豆1パック、コップ1杯の牛乳をそれぞれ足しても、まだ20gには届かないくらいの量感です。「思っていたより摂れていないかも」と感じる方が多いのも、このあたりに理由があります。

だからこそ、1品に頼るのではなく、いつもの食卓のあちこちに少しずつ足していく発想が現実的です。味噌汁に豆腐を多めに入れる、ヨーグルトに牛乳を少し足す、和え物にツナ缶を混ぜる。ひとつひとつは小さな工夫でも、積み重ねると意外と効いてきます。

食べにくさは「調理」でカバーできることが多い

たんぱく質を含む食品は、パサついたり、ぼそぼそしたりして食べにくいという声もよく聞きます。ただ、これは食材そのものの問題というより、調理の仕方でかなり改善できる部分でもあります。

たとえば肉や魚は、片栗粉を薄くまぶしてから焼いたり煮たりすると、口当たりが滑らかになります。豆類は、そのままだとぼそぼそしがちでも、スープにしてミキサーにかければ飲み物感覚で摂れるようになります。乳製品も、パサつきが気になる高たんぱくタイプは、練乳やはちみつを少し垂らすだけで食べやすさがぐっと変わります。

「この食品は食べにくいから諦める」ではなく、「どう調理すれば食べやすくなるか」という視点に変えてみると、選べる食材の幅が広がります。

家族だからこそ見つけられる組み合わせがある

好みや飲み込みやすさは人それぞれなので、正解はひとつではありません。毎日の食卓を見ている家族だからこそ気づける「この人にはこの食べ方が合う」という発見もあります。今日ご紹介した工夫を土台にしながら、色々試して、その人なりのやり方を見つけていってもらえたらと思います。


「粗食」より「しっかり食べる」でいいんです


歳を重ねたからこそ、体はあっさりよりもしっかりを求めています。特にたんぱく質は、筋肉や体力を守り、介護が必要になるリスクを遠ざけてくれる栄養素です。
まずは今日の食卓に、卵焼きひと皿でも冷奴ひと皿でも構いません。ひとつ足すところから始めてみてください。食事の内容に迷ったときは、かかりつけ医や管理栄養士に相談するのも、いつでも頼っていい選択肢です。

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この記事を書いた人

管理栄養士・介護支援専門員・認定心理士として、高齢者の方の栄養管理を中心に、妊婦さんや赤ちゃんの栄養支援にも携わってきました。
栄養・介護・心理、3つの視点から「食べること」と「心地よく歳を重ねること」のヒントを、やさしい言葉で綴っています。
このブログが、大切な人のごはんに悩む誰かの、小さな助けになりますように。

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